見えざる隣人

吉田忠則『見えざる隣人  中国人と日本社会 』 (日本経済新聞出版社)

〈六十五万人の在日中国人の実像に迫る〉

 いま日本に住んでいる外国人のなかで、何人〔なにじん〕が一番多いか。それは中国人なのだそうです。
 これはちょっと意外だったね。なぜって、「韓国・朝鮮人が断然多い。外国人と言ってもこれは別格」というのが、長いあいだの日本の常識だったからです。
 ところが本書によると、二〇〇七年にとうとう中国人が抜いてトップになっちゃった。いま日本にいる中国人は約六十五万人。すごい数だね。
 どういうことをしている人が多いのか。
 まず留学生が八万数千人。全留学生の六割を占める。つまり中国以外の世界各国各地域から来ている留学生を全部あわせても中国一つにかなわない。「教授」として日本にいる人が約二千五百人。もちろんダントツ。第二位のアメリカ人を倍以上ひきはなしている。
 これにも驚いたね。全国どこの大学にも、二人や三人は中国から来た先生がいる勘定になる。みな日本語ができて日本語で授業している。
 それから社長さんが多い。中国人は人に使われるのがきらいで、しばらく企業に勤務していても、すぐ独立して自分の会社をおこしちゃうんだそうです。
 どういう会社が多いのか。
 断然IT(情報技術)関係が多い。小生この本を読むまでITなんてことば知らなかったよ。ところがこの本にはほとんど毎ページのようにITが出てくる。
 中国はこの方面が盛んで、毎年大学の情報工学系の卒業生が三十数万人いる。つぎがなんとインドで二十数万人。対してアメリカ九万人、日本二万人とある。こりゃITさんがぞくぞく日本へ来るわけだよ。
 六十五万の中国人たちは、日本全国に均等にちらばっているわけではない。いる所にはかたまっている。その代表が埼玉県川口市芝園〔しばぞの〕町の芝園団地だ。高層集合賃貸住宅である。町全体が団地で、ここに千八百人ほどの中国人がいる。町の人口の三分の一が中国人である。中国人は中国人同士群れることを好むからこんなに多くなった。
 日本人との関係はよくない。団地の自治会には一人も入らない。しょっちゅう摩擦がおこる。問題は種々あるが、日本中どこでも中国人がいる所でおこるのが、ゴミ出しのルールを守らない、声がでかい、などだ。きめられたゴミの分別をせず、デタラメに捨てる。団地の自治会長さんは、「最低の人種だ」と吐き捨てている。
 ゴミ捨てのルールを守らなくても処罰されるわけではないし、第一だれが捨てたゴミかわからない。そういう規則は中国人は守らないのである。
 芝園団地に住む中国人の九割が大学卒で、そのほとんどが例のITなど知的な職業についている。中国人のばあい、高学歴、知的職業、教育熱心などと、社会的ルールを守ることとは無関係なのである。
 自治会長さんが言うように中国人とはそういう人種なのであるか、それとも社会主義がこういう人間を生んだのか。
 ああ、この本は日本経済新聞の連載記事をまとめたもので、著者は同紙の記者です。(『文藝春秋』’10.3)

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

たかしまとしお

Author:たかしまとしお
高島俊男「お言葉ですが…」ブログへようこそ!
ここでは「お言葉ですが…」の最新原稿と単行本未発表の書評などを掲載します。

単行本著作一覧・連載記事一覧は下記リンク欄をクリックしてください。

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
リンク